全人的痛みセンター
〜ひとりひとりの身体・こころ・暮らしを支える痛み治療〜
センター長ご挨拶
痛みで困っている患者・家族の悩み、苦しみが減り、幸せになりますように
麻酔科部長・緩和ケア内科
全人的痛みセンター長
笹良 剛史 医師
痛みは最大の健康問題の一つであり、痛みが長引くことで心身に不調をきたし、生活に支障をきたしている人は少なくありません。
近年、痛みの複雑な要因やメカニズムがわかり、身体・心理・社会など多面的なアプローチが重要であることが証明され、治療法も刷新されています。急性痛、がん性疼痛、慢性疼痛にはそれぞれに適した治療法があり、「がん」でも「非がん」でも、QOL(クオリティー・オブ・ライフ:生活や人生の質)の向上を目的とする治療には多診療科・多職種で行う集学的アプローチが不可欠であることがわかっています。
しかしながら、がん対策には全国でチーム医療による緩和ケア提供体制が整備されている一方、「非がん」の慢性疼痛に対しては、まだまだ治療体制は不十分な状態です。
私たち友愛会豊見城中央病院では長年、薬物療法、神経ブロックやインターベンショナル治療、運動療法、心理療法を含む集学的痛み治療に取り組んでおり、2020年からは厚生労働省 慢性疼痛診療システム普及・人材養成モデル事業に協力し、九州大学、琉球大学と連携して、「全人的痛みセンター」を開設することとなりました。
さまざまな形で痛みに関わっておられる各診療科をはじめ、行政や教育機関など地域の皆さんと連携して、痛みで苦しむ方々が苦痛や苦悩から自由になり、生きる喜びを実感できるような医療提供を実現していきたいと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
痛みとは
1. 一般的な痛みと慢性痛の違い
痛みは非常につらく不快なものであり、健康的生活に影響を与える最大の問題として挙げられています。怪我や病気などによって急に現れた痛みは急性痛と呼び、これは身体に対する有用な警告システムであり、傷や腫れが治るとともになくなります。
これに対し、慢性痛は3ヶ月以上継続する痛みで、原因がはっきりしないものや、病気が治っても痛みだけが残ったものなどが含まれます。痛みは主観的な症状であるため、他人からはなかなか理解されにくく、日常生活や社会活動にも多大な影響を与えます。
一般的な痛みと慢性痛とでは痛みのメカニズムが大きく異なり、治療者側も治療を受ける側もどう対処してよいかがはっきりせず、長引く痛み(慢性痛)で困っている患者さんは少なくありません。
2. 痛み治療に対する全国的な取り組み
全国の痛み患者は2千万人とも言われています。厚生労働省による痛み治療に対する提言に基づき、2011年に「痛みセンター連絡協議会」が設立されました。
現在、慢性痛の治療として国際的に評価されている集学的痛み治療を行い慢性疼痛治療を普及する「痛みセンター」の設置が全国で進められており、当センターは2020年に厚生労働省から沖縄で唯一の拠点施設「集学的痛みセンター」として認定されています。
3. 痛みに関するご質問
痛み対策の取り組みについてさらに詳しくお知りになりたい方は、患者さんや医療者向け広報機関として厚生労働省の支援に基づいて設立されている「NPO法人いたみ医学研究情報センター」のホームページをご覧ください。
(下記法人は医療機関ではありません)
【認定NPO法人 いたみ医学研究情報センター 電話相談窓口】
電話 0561-57-3000
月曜日~金曜日 9時~17時
※12時半~13時半を除く
(土日祝日や夏季及び年末年始はお休み)
「認定NPO法人いたみ医学研究情報センター」ホームページ
豊見城中央病院 全人的痛みセンターについて
1. 一般的なペインクリニックとは
ペインクリニック(pain clinic)とは、痛み(pain)の診断・治療を行う専門外来のことです。慢性や急性の痛みの原因を明らかにし、最適な治療プランを作成・実施して、痛みを治療します。
ペインクリニックでは、神経ブロック療法などを行うこともありますが、長く続いている痛みには身体的因子だけではなく、心理的社会的因子が複雑に絡んでいることが多く、慢性痛の診療は痛みを軽減することのみを目標として投薬や注射などを行う従来型の医療モデル(生物医療モデルbiomedical model)では限界があります。
2. 豊見城中央病院の全人的痛みセンターとは
慢性の痛みには心理的社会的因子が複雑に絡んだものであることを理解し対応する必要があります。この診療モデルを生物心理社会モデル(biopsychosocial model)といい、当院の全人的痛みセンターはこの治療モデルに取り組んでおり、2011年4月から国際標準の慢性疼痛治療モデルである集学的痛み治療を実践的に導入し、院内外の複数の専門医療者による(集学的痛み治療(multidisciplinary pain therapy)多職種チームで疾患を評価し治療方針を決定しており、2020年には、厚生労働省より沖縄県で唯一の「集学的痛みセンター」に認定されています。
- 日本ペインクリニック学会指定研修施設(ペインクリニック専門医の資格を得るための指定研修施設)
- 日本緩和医療学会認定研修施設(緩和ケア専門医の資格を得るための指定研修施設)
当センターの治療
1. 治療の対象となる主な疾患
頭痛(偏頭痛、緊張性頭痛)、各種神経痛(三叉神経痛、糖尿病性神経障害、帯状疱疹後神経痛、坐骨神経痛など)、脊椎疾患に関連する(椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、変形性脊椎症など)、急性帯状疱疹、ケガや術後の慢性の痛み(乳房切除後疼痛症候群、開胸術後疼痛症候群など)、難治性慢性疼痛症候群(線維筋痛症、椎弓切除後症候群、複雑性局所疼痛症候群、CRPS、筋筋膜性疼痛症候群など)、慢性腰下肢痛、末梢血行障害(バージャー病、閉塞性動脈硬化症)、慢性がん関連疼痛、原因の明らかでない痛みなどが当センターの治療対象となります。
2. 治療の特色
当センターでは専門医によるブロック注射や高周波熱凝固、脊髄電気刺激療法などのインターベンショナル治療、最新のガイドラインに基づいた薬物療法、漢方などの診療に加え、全患者に対し各種心理テストによる評価を行い、心理士による認知行動療法の学びの支援や自律訓練法やマインドフルネス等の心療内科的なアプローチ、健康運動指導士や理学・作業療法士による運動生理学に基づいた運動療法の提供をしております。
また、多職種スタッフそれぞれの専門性を活かし、年に1回の外来集団療法(リラクセーションクラス)を行っております。集団療法では、認知行動療法に基づくストレスマネージメントや痛みに対する感情や考えとの付き合い方、睡眠、運動、栄養、薬剤等の適正管理の方法を知り、痛みのマネージメント力を向上させる事によって、日常生活を活きいきと過ごせるようになる事を目指したプログラムを提供しています。
3. 当院の治療実績
年 | 延べ診察回数 | 新規患者数 |
---|---|---|
2019 | 1,813回 | 105名 |
2020 | 2,531回 | 107名 |
2021 | 2,694回 | 93名 |
2022 | 2760回 | 82名 |
当センターの診療体制
医師、看護師、臨床心理士(公認心理師)、健康運動指導士、理学・作業療法士、栄養士、薬剤師などの専門医療職によるチームが、必要に応じてリハビリテーション科、整形外科、神経内科、精神科などの各診療科と連携して治療を行っています。
センター所属の医師
医師名 | 専門分野 | 特に専門とする領域 | 専門医資格 |
---|---|---|---|
笹良 剛史 | 麻酔科・緩和ケア | 麻酔科・緩和ケア | 麻酔学会指導医・ペインクリニック学会専門医・慢性疼痛学会専門医・緩和医療学会認定医・公認心理師 |
島尻 隆夫 | 麻酔科・緩和ケア | 麻酔科・緩和ケア | 麻酔学会専門医 |
赤嶺 智教 | 麻酔科・ペインクリニック | ペインクリニック | 麻酔科学会指導医 ペインクリニック学会専門医 |
外間 力人 | 整形外科 | スポーツ医学・関節外科 | 日本整形外科専門医 日本リハビリテーション医学会臨床医 |
比嘉 あゆみ | 精神科(非常勤) | 精神科一般 |
センター所属の専門医療職
氏名 | 職種 | 専門資格など |
---|---|---|
砂川 望美 | 看護師 | 精神保健福祉士 |
金城 聡美 | 看護師 | |
大城 ほずみ | 看護師 | |
瀬名波 耕二 | 臨床心理士 | 公認心理師 |
平仲 唯 | 臨床心理士 | 公認心理師 |
神谷 信輝 | 臨床心理士 | 公認心理師 |
渡邊 明寿香 | 臨床心理士 | 公認心理師 |
當間 あきの | 臨床心理士 | 公認心理師 |
友利 七海 | 臨床心理士 | 公認心理師 |
小幡 美和 | 健康運動指導士 | 公認心理師・心臓リハビリテーション指導士 |
新垣 進 | 作業療法士 | |
西川 正悟 | 理学療法士 | |
金城 奈生 | 理学療法士 |
初診案内
1.はじめに
沖縄県南部にお住いの患者さんへ
現在、当センターは予約が大変混み合っており、ご予約日確定にお時間をいただく場合がございます。あらかじめご了承ください。
県外や遠方の患者さんへ
お住まいの地域の担当病院への受診が推奨されております。誠に申し訳ありませんが、まずは地域の担当病院にお問い合わせくださいますようお願い申し上げます。
当センターは完全予約制です
診察に際しては、事前にご予約いただき、当院の「診察予約申込書」と現在治療中の医師による「診察情報提供書」(紹介状)をご持参ください。
診療情報提供書(紹介状)の必要性について
当センターを受診される患者さんには、現在通院中のすべての医療機関からの診療情報提供書(紹介状)のご提出をお願いしています。これは、今までの検査結果(X線写真、CT、MRI、血液検査など)があれば、不必要な検査を行うことなく、診療を効率的に行うことができるためです。
また、お薬手帳や最近の健康診断・人間ドック結果なども治療の効果を高め、副作用や合併症を避けるために役立ちますので、可能な限りご持参ください。
初診時の診察時間について
初診では、必要な検査や心理テスト、生活歴を含む問診票のご記入などをいただいた後で、医師による診察を行います。お一人おひとりに充分な診察時間を設けるため、初診時の病院滞在時間は平均3時間以上におよびます。あらかじめご了承ください。
2. 初診の予約方法
ご予約いただける方
他の医療機関からの「診察情報提供書」(紹介状)をお持ちの方のみ
初診受付日
月・水・木・金の午前中〈完全予約制〉
ご予約方法
- 紹介先、若しくはかかりつけ医からの「診察情報提供書」「診察予約申込書」に必要事項をご記入のうえ、豊見城中央病院 地域連携室(FAX:098-851-9437)に送付してください。
- 「診療情報提供書」を確認後、ご予約日時を決定しご連絡いたします。
3. 診察に関するご注意事項
1. 予約外、救急・時間外の診療、担当医の指名は受け付けておりません
- 現在、当センターは一人でも多くの患者さんを丁寧に診察するため、原則として完全予約制としています。予約外で来院された患者さんは、医学的に緊急性が高い場合を除き、後日の診察となります。
- 当センター担当医の当直はございませんので、救急対応や診療時間外の診療は行っておりません。
- 医師を指名しての診察希望は受け付けておりませんので、あらかじめご了承ください。
2. 書類作成等について
- 当センターでは、労災認定や事故関連保障、訴訟関連、身体・精神障害者手帳等の書類作成には対応しておりません。(公的保障関連書類の内容によっては作成できないものがございます)
医療従事者の方へ
1. 医療機関からのご予約
下記へお問い合わせください。
豊見城中央病院 地域連携室
電話(代表):098-851-0501 FAX:098-851-9437
2. 施設見学のご案内(医療従事者向け)
当センターでは、私たちの取り組みを多くの方に知っていただきたいと考えており、地域の医療機関や診療所等にお勤めの医師、看護師、理学・作業療法士、鍼灸師や臨床心理士等、あらゆる分野の医療に従事されている方々の見学を随時受け付けております。
見学をご希望の方は、下記メールアドレスまでご連絡ください。
全人的痛みセンター 事務連絡担当
豊見城中央病院 総務課 担当:大城
Eメールアドレス:zitami@yuuai.or.jp